旅人 丸山隆平 BL小説


息苦しさと心地よさの間で意識をゆっくりと浮上させていく。「……裸のつき合い」。幸いなことに、もうひとつの大口のスポンサーは残っているからと、自分自身に言い聞かせるように呟いた柏木は、自らを奮い立たせるように言った。石丸は瞳の中の下心と欲望を、微塵も隠そうとしないで恋人を誘う。

「駄目。駄目だよっ。明生は、ママの旦那さんなんだから、こんなこと、僕になんかしちゃ駄目。ママが、ママが悲しむから……」。

なにもかも知った上で、その術中にハマってみるのもいいかもしれない。一瞬にして唇が盗まれた。きっとこうして待っている間にも、若者らしい感情の高ぶりに翻弄されていたのだろう。と嘆いたことをすっかり忘れてしまう。でも、身体だけが先走って止められない。「──篤くん」。そんな時に、しばらく働かなくても生活できるだけの蓄えがあれば、心丈夫だと思うのは、柏木の性格からしてみれば当然のことなのかもしれない。

酔ったのか、飲んでいる間もさんざん永田にまつわりついていて、そのまま家まで着いてきてしまったのだ。理央は無言でルシエルの頭を叩いた。二階にある狭いゲストルームに布団を敷いて、どうにか潤を寝かせたものの、克彦は困惑している。「……ウソだ……ありえねぇ」。「あの……みやびさん、やっぱり……………」。身支度を済ませた美幸は、奇麗な貝殻で装飾された鏡の前で首を反らし、パタパタと丁寧にファンデーションを塗っていく。

彼を腕に抱き、その身体の奥深くに欲望を受け入れさせていても、唇にだけは触れさせてはいけないものなのだ、と篝は固く信じるように思っていた。

「ありがとう。こんな時間においしい珈琲を飲めて、今日はこれだけでもラッキーだった」。「抱きたい相手との友情ごっこなんて、俺にとっちゃストレスのもとになるだけだ」。


ボーイズラブ小説作品紹介


15年振りにスイスから帰国し、日本に馴染めずにいた高宮は、ある日、珈琲の薫りに誘われて一軒のカフェへと辿り着く。そこで出会った優雅で美しいギャルソン・楽に次第に惹かれていき――。※イラストは含まれていません。

タイトル:カフェラテの純愛
著 者 名:剛しいら
レーベル:B−cube
発 行 元:フロンティアワークス

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